遺 言・死後事務委任契約
最近、遺言について、様々なマニュアル本が発売され、ウェブサイト上でも情報が氾濫しています。これらを参考にするのも悪くはないでしょうが、遺言書は、あなたの最後の手紙となるものですから、より本式なものを作成したいとお考えであれば、専門家に相談されることをお勧めいたします。当事務所では、作成依頼を受けた遺言書について、法律文書として正しいものであることは当然のこと、お客様一人ひとりの思いが相続人の心に届くものとなるよう努力を惜しまず、また、日々研鑽を積んでおります。
さらに、遺言書と合わせて、「死後事務委任契約」を作成しておくこともできます。死後事務とは、①家族・友人への連絡、②葬儀・埋葬手続、③役所・関係機関への届出、④生前の医療費・施設利用費など未払金の精算、謝礼金の支払、⑤遺品整理及び住まいの処分、⑥各種サービスの解約などです。これらのことは、遺言で依頼できる内容ではありません(遺言書に記載していても、法的強制力がありません)。もし、あなたに相続人がいない場合や、親族がいても疎遠になっている場合は、生前、あなたの望んでいたとおりに死後の手続がなされるよう、信頼できる知人や法律専門家と、死後事務委任契約を結んでおくことをお勧めします。
相談事例1
遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言があるとのことですが、どのような違いがありますか。
回答
「自筆証書遺言」は、遺言者が、遺言の全文(財産目録は例外)・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言です。また、「公正証書遺言」は、公証人に作成してもらい、かつ、原本を公証役場で保管してもらう方式の遺言です。令和2年7月より開始した自筆証書遺言書保管制度(相談事例2参照)により、自筆証書遺言の使い勝手が格段に向上しました。とはいえ、公正証書遺言は、公証人が関与するため、遺言者本人の意思能力や遺言の効力を巡る争いが起きにくいといった点で、なお優れていると考えます。
相談事例2
自筆証書遺言を作成しましたが、どのように保管していればよいですか。
回答
自筆証書遺言の保管については、これまで遺言者が自分で所持しているか、親族に預けておく等の方法しかありませんでしたが、令和2年(2020年)7月10日より、法務局に保管を依頼できるようになりました(自筆証書遺言書保管制度)。この制度を利用すれば、遺言書の偽造・変造・紛失を防ぐことができますし、検認(相談事例3参照)も不要となります。詳しくは当事務所にご相談ください。
相談事例3
亡くなった母が生前書いたと思われる遺言書を、実家で発見しました。封がされていますが、開けてもよいですか。
回答
自筆証書遺言を見つけた場合は、家庭裁判所で「検認」の手続を受けなければなりません。検認とは、遺言書の形状、加筆・訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の状態を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。そして、封印されている遺言書については、その検認の日に、家庭裁判所で相続人の立会いのもと開封しなければならないことになっていますので、勝手に開封してはいけません。なお、「公正証書遺言」や「法務局に保管されている自筆証書遺言」は、偽造等の可能性が低いため、検認の必要はありません。
相談事例4
遺言書の作成を考えていますが、私の死後、遺言のとおりに遺産を分けてくれるか心配です。
回答
遺言を書いた人(遺言者)は、自分が死亡した後に遺言が正しく実行されるのを見届けることはできませんね。そこで遺言者は、遺言の中で、責任をもって遺言を実行する人=「遺言執行者」を指定することができます。遺言執行者には、相続人を指定してもよいですし、司法書士などの専門家を指定することもできます。
相談事例5
私は、妻が先に亡くなり、身内とは疎遠で、頼る人がおらず一人で暮らしています。私が亡くなった後は、妻のお墓に私も一緒に入り、永代供養を受けたいのですが、それが約束される方法はありますでしょうか。
回答
この場合、遺言書ではなく、死後事務委任契約の作成をお勧めします。埋葬の方法など死後事務については、仮に遺言書に記載しても、法的強制力がありませんが、信頼できるご友人や、司法書士等の法律専門家との間で、死後事務委任契約を結ぶことで、ご自分の亡き後の葬儀、埋葬、ご供養などをどうしてほしいのか、事前に決めておくことができます。